唐突ですが、このブログ、塾からのお知らせやイベントの案内がメインで、エンターテイメント性に欠けますよね。もうちょっと面白そうなコンテンツもあった方が良いという事で(とはいっても、あくまで予備校の公式ブログなのである程度の縛りはありますが)適当に面白そうなニュースや、雑学の類を紹介していこうと思います。
最初のネタは、タイトルの通り「音楽を聴きながら勉強するメリットとデメリット」
音楽を聴きながら勉強や仕事をする
皆さんも経験ありますよね?
そして、「音楽聞きながらなんて集中できるの?」(絶対にできないと決めつけてる感満載に)なんて声をかけられる経験も。
賛成派にはこれといった根拠がなく、反対派がよく持ち出す「一つの事に集中しなきゃいけないのに、二つ(音楽と勉強)に手を出している時点でナンセンス」的な意見に対して効果的な反論を用意することができず、とりあえずその場はイヤホンを外す……という流れはきっと、世界中の至る所で発生しているのではないでしょうか。
もしかしたら今日ここで、勉強中の音楽賛成派の皆さんに、反対派に抗う為の効果的なフレーズを提供できるかもしれません。それは
「外科医だって集中するために手術中に音楽を聴いているんだZE☆」
というものです。実際に言ってみた際に生じるトラブルについては責任を負いかねるので悪しからず。ちなみにソースはこちらの記事。
英語の記事です。大学の二次試験の長文よりは簡単なので、高校生の皆さんは読んでみてもいいかもしれません。
さて、気になるその内容ですが、figure 1(医療関係者向けのSNS)とSpotify(音楽配信サービス)が、50か国以上の約700人の外科医と医療従事者を対象にアンケートをとったところ、90%以上が手術中に音楽を流している事が判明したというもの。
外科医達が手術中に音楽を流す理由は、リラックスできて、より集中できるからだそう。
専門分野別に、予想を裏切る驚きのプレイリストが公開されています。
例えば、ガンなどの悪性腫瘍を特に対象とする(Surgical oncology)30歳~39歳の外科医達はクイーンやクリーム、ローリングストーンズなど、バリバリにロックンロールしている模様。
こちらは40歳~49歳で執刀年数12年という、信頼できそうなベテランの耳鼻咽喉科の外科医医達。彼らの手術室のジュークボックスには、プリンスやスティング、クラプトンがスタンバイ。こちらもモーツァルトとは遠く離れています。
消化器外科手術に携わる外科医(General Surgeon)達は最もロックンロールな感じで、クイーンやエアロスミス、AC/DCの名前が挙がっています。
なんだか70~80年代のビッグバンドが多いのは、現役の外科医達の青春時代が丁度その辺りだったからでしょうか。
ちなみに日本のTV番組でも過去に似たような調査をしたことがあるようで、AKB48の恋するフォーチュンクッキーや、深夜の緊急手術にはB’zのUltra Soulが好評な様子。
という事で、こと手術に集中するためには、音楽を聴きながらがいいそうです。お医者さん達が言っている事ですからね。これはもうそうなのでしょう。
じゃあ勉強に集中するためなら、実際のところ音楽を聴きながらというのはどうなのでしょうか。
脳は音楽が好き
音楽を聴きながら勉強することの良し悪しについて触れる前に、音楽が脳に与える影響を知る必要があります。
これについては沢山の研究が様々な機関で行われていますが、今回のテーマに関係ある物としては、2014年に言わずと知れたオックスフォード大学音楽学部と、デンマークの最高学府の一つであるオーフス大学統合神経科学部が興味深い研究結果を発表しています。
詳細は省きますが、簡単にかいつまむとリズムに合わせて少し体を動かしたくなる様な音楽に対して脳は幸福感を得たり、リラックスする様です。
ということで、音楽によっていい気分になり、リラックスするというのは科学的に間違いない様です。(これについては科学的に証明されなくとも、経験的に誰もが納得するところだとは思いますが)
それに、勉強するときには、緊張やストレスに満ちた状態よりは、リラックスしている方が良いのは間違いないでしょうしね。
集中の種類を知ろう
オーケィ、リラックスについては分かった。じゃあ音楽を聴きながら集中する事については?
はい。肝心の集中についてですが、そもそも集中って何なのでしょう?
実は我々には2つの種類の集中する能力が備わっています。
例えばあなたが一人、静かな部屋で本を読んでいる際に、部屋の外で何かが爆発したとします。例え本の内容がどれだけ面白かったとしても、きっとあなたの意識は本から引きはがされ、その爆発音に向くでしょう。これを本に対する「集中が途切れた」という事も出来ますが、「集中の対象が別に移った」と考える方が良いかもしれません。実のところ、その瞬間あなたは本ではなく爆発音に対して集中しているのですから。
そして、この時に発揮されているのが一つ目の集中です。この種類の集中は意図的に操作することができません。あなたの五感が常に張り巡らせている知覚システムにより強制的に引き起こされ、その反応はとても素早く、そして強力です。
そしてもう一つは、あなたが意図的に引き起こす集中です。集中したいと思った対象に対して発揮されるもので、勉強に対して求められるのはこちらの種類。
厄介なのは、前者の集中はコントロールできないという所。あなたの五感は常に自動であなたの周囲の情報をスキャンし続けています。特に、あなたが集中しなければならない対象がつまらなかったり、嫌いだったりすればなおの事。この本能的に発揮される集中力は、よりパワフルに意図的な集中を妨害します。
例えば、あなたの目の前には覚えなければならない退屈かつ難解な公式や語彙が並んでいて、あなたの脳はすでに不機嫌になっています。そして、あなたのすぐ横では苛立たしそうに溜息を連発しながらペンを小刻みにカチカチ言わせている人が居たらどうでしょう。きっとあなたが難解な公式や語彙に向ける意識的な集中力は、あなたの五感が拾い集めてくる溜息やペンの音に対する集中力にあっけなく敗北するのではないでしょうか。
音楽は意図的な集中を手助けする
そんな時、音楽はとても強力かつ有効な解決策となるでしょう。先述の通り、あなたに合った音楽は脳に幸福感をもたらし、リラックスさせます。この時点で、全くの無音な状態よりも良いと言えるでしょう。さらに、音楽によってあなたの五感(聴覚)は、苛立たしい溜息やペンの音を感知できなくなるため、それらに集中させられずに済みます。
じゃあ、例えばその為の音楽がアイドルソングだったり、ハードロックだったり、ヘヴィメタルだったり、アニソンだったりしてもいいのでしょうか?
少し前に集中を助けるということで、ホワイトノイズという言葉が流行りましたが、やはりあの手の今一な感じの(少なくとも筆者はそう感じました)音でなければ許されないのでしょうか。
実のところ、ホワイトノイズや、そこから派生したピンクノイズの集中に対する効果については、研究によって結果がばらけており、集中を阻害することはなさそうだけど、集中を助けるかと言われると何とも言えないという所どまりです。
そして、どんなBGMが良いのかはぶっちゃけ人それぞれで、嫌われてなく、かといって皆が大好きというわけでもない曲がよさそうというような研究結果が輔仁大学から出ていたりします。
ただし、歌詞のある曲はなるべく避けた方がよさそう。というのも、人間の聴覚は音声に対して、興味のある内容や声に対して選択的に注意を向ける傾向があるからです。
ゲームのBGMこそ最適?
もし、普段からゲームをプレイしたりするなら(人理を修復していたり、提督だったり、プロデューサーだったり、あるいは騎空士だったりするあなたの事です)それらのゲームのサウンドトラックから、インスト曲を引っ張ってくるのもいいかもしれません。
というのも、ゲームのBGMというのはプレイヤーをゲームの世界観に没入させながらも、プレイ内容に対する集中を妨げないように作曲しなければなりません。この微妙に矛盾している要求に応える為、ゲームのBGMはプレイヤーの周囲からの雑音を阻害することでゲームに集中させながらも、曲その物には集中させず、その上ずっと聞き続けていても飽きないものになっているそうです。なるほど、確かに筋は通っていますね。
当然ですが、プレイ内容を思い出して最適なユニットやptの構成だとかを色々考えだしてしまうようなのは止めておいた方が良いでしょう。
結論としては、全くの無音や嫌いな音楽よりは、どんなジャンルであれ自分が好きな音楽であれば、基本的には集中の助けになりそうで、歌詞が無ければ理想的という所でしょうか。
ただし、音楽が勉強への集中を助ける仕組みは、あくまでも
①脳をリラックスさせ
②楽しい気持ちにしたうえで
③雑音によって本能的に発揮されてしまう種類の集中を阻害する(気が散る要因になりそうな音を排除する)
というもの。
ですから、最初からやる気がなく、意識的に集中しようという考えも無い人に対しては実に無力だと思われます。
その場合勉強中に音楽を聴いたとしても、やらなきゃいけない事があるのに、音楽を聴いているだけの人が一人増えるだけの効果しかない為、その辺りは結局自己管理するしかなさそうです。
参照元一覧
https://www.theguardian.com/education/2016/aug/20/does-music-really-help-you-concentrate
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0094446
http://content.iospress.com/articles/work/wor01141
https://en.wikipedia.org/wiki/Cocktail_party_effect
https://www.fastcompany.com/3030502/the-new-playlist-for-more-productive-work-video-game-soundtracks